ガラスレザーと型押し革をコンビ使いしたミニポシェットを作りました。
こんなポシェットが作りたい
まずはコンセプト。
- とにかく真っ白
- お散歩からちょっとしたお出かけまで使える
- シンプルだけど目を引く
- きれいめな装いでもカジュアルな服装でも、しっくりなじむ
- 季節を選ばず一年中活躍
- サイズはできるだけ小さく。スマホとお財布(長財布は除く)が入るサイズ
- 小さくてもしっかり自立する
使用した革
今回使用した革は、日本製の牛革です。
胴体はガラスレザー、マチは型押し革を使っています。
ガラスレザーというと馴染みがないかもしれませんが、エナメルと同じように革の表面を合成樹脂で加工したものです。
今回のガラスレザーはエナメルの様に艶々とした光沢ではなく、マットで上品な輝きが素敵な革です。
シュッとした鞄に仕立てたらカッコいいだろうなと想像していました。
ところで、『合成樹脂で表面加工』と言うと、「革の自然の風合いが損なわれて…」と否定的にとらえてしまいがちです。
しかし、ヌメ革とはまた違った魅力があり、触感はサラリとして気持ちよく、いつまでも撫でていたくなります。
そして良い面は他にも。
表面をコーティングしてあるので、雨の日も気にせず使用することができるのです。
また、傷がつきにくく丈夫です。流石に鋭利な刃物には敗北しますが、ひっかき傷くらいであれば目立ちません。ただし、曲げ伸ばしは苦手で、皺が入た所からひび割れが発生しやすいという弱点があります。
ですので、このポシェットではガラスレザーに皺が入らないよう設計しています。
型押し革の方はというと、硬めのイメージがあるかもしれませんが、今回の革はもっちりしなやか。こちらもヌメ革に比べて傷が目立ちにくく、雨に強いです。
実験的に、2種類の革を張り合わせたものに水道の蛇口から水をかけてみましたが、染みになる気配は全くありませんでした。
さて、今回あえて2種類の革を組み合わせてバッグを作ったことには理由があります。
まずガラスレザーはシャープでキリッとした雰囲気が素敵なのですが、単体で使うとどうしてもカッチリとしたバッグになってしまいます。そして型押し革の方は単品使いだとなんとなくパンチ不足。
そこで、ガラスレザーのクールさを型押し革のしなやかさで中和することにしました。
二つの素材を組み合わせることで、それぞれの良さをより引き出すことができたのではと思っています。
ちなみに、それぞれの革を単品使いしたバッグも作っています。
●ガラスレザー

●型押し革

デザイン
本体のカタチ
ただの長方形ですよね、
と言われればその通りなのですが、胴と横マチのつなぎ方やバッグ底はどのように処理するか、など、何通りもの選択肢があります。
今回目指すのは、ガラスレザーのシャープさを活かしつつ、型押し革を足すことで少しで少し優しい印象にすること。
シャープさを強調したいなら、「分割通しマチ」を使う方法があります。
例えばこんな鞄です
胴のパーツの輪郭をくっきりと魅せることができます。
しかし、写真のとおりマチ部分が鞄の内側に入り込むため、容量が稼げない(思ったほど荷物が入らない)というデメリットがあります。
そこで今回は横マチは外に向かうように取り付けました。底は胴から続けて切り出し、境目を90度に曲げることでシャープさを損なわないようにしています。
しかし、革には厚みがあるので90度に曲げるためには工夫が必要。見えないところであれこれ細工をしています。
長方形パーツのバランスについては、普段は黄金比を活用して決定することが多いのですが、今回はなぜかしっくりこなくて、試作を重ねた上でこのサイズに決定しています。
バッグ蓋の検討
バッグ蓋の有無については結構迷いました。
蓋を付けると使用時の安心感がグッと増します。
何パターンかの仕様を検討したのですが、シンプルさ、シャープさを損なわないために蓋はナシに、という結論に至りました。
ショルダーベルト
ショルダーベルトはギボシ金具で調整可。
ギボシは凸形の金具で、革に開けた穴にはめることで留まります。
穴をあけた分だけ調整可能な長さは増えますが、穴あけは最低限にした方が高級感が出ます。

幅が細めのベルトなので、好きな位置で結んでいろいろな持ち方ができます。
自立するポシェット
床に置いたときにしっかりと自立する仕様で、ポシェットですが底鋲付きです。
『底鋲はついているのだけど、底がベタっと床についてしまう』なんてバッグも多く存在していますが、このポシェットは形をしっかり保つように仕立てているので、床が汚れる心配はありません。
底鋲が本来の役割を果たせるように設計しています。

おまけのタッセル
『シンプルな鞄』+『大き目タッセル』の組み合わせを見ると心が躍ります。なのでおまけでタッセルをつくってみました。
繊細でしなやかなタッセルが好きなので、ごく細目にカットしてまとめました。
最後に
こんなにシンプルで小さいバッグなのに、あれこれ考えてパンクしそうでした。
無事に完成してほっとしています。
2020年8月製作