端正で格式高い鞄
鞄教室時代の課題で作ったのは、緻密な仕立てによる、昔ながらのデザインが美しい鞄。
付いているだけでなぜかワクワクしてしまう錠前や口枠。
何枚もの革を積み重ねたのち、刃物で削りだしてフォルムをつくりだした持ち手。
手縫いのステッチとピカピカに磨かれたコバ。
当時、鞄の良し悪しなんて何も知らなかった私でさえも、ひと目見て間違いなくカッコいいと思える鞄でした。
しかし、作った鞄を実際に使用してみると使い勝手が悪いなと思うことが多々ありました。
かぶせに錠前が付いたブリーフケースの使いにくいところ
※かぶせとは鞄の開口部を覆うフタのこと
口枠鞄の使いにくいところ
続いて、口枠鞄です。
私が初めて作った口枠バッグは、末広がりのシルエットが可愛いドクターバッグ。
課題の中で一番憧れていた鞄だったので、完成したときはすごくうれしかったのを覚えています。
閉める時にサイドが内側に入り込む
同じく口枠使いで、このボストンバッグも見た目ほど荷物がはいりません。
でも持ち手が2本で腕にかけることができるので、開け閉めは少しだけしやすくなります。
一本持ち手は見た目スッキリでお洒落なのですが、実用面だけを考えたら持ち手は二本あった方が使いやすいです。
そしてこのダレスバッグ
こちらも開け閉めは面倒。
そしてブリーフケースと同じく横マチと底マチが内側に入り込むデザインなので、見た目ほど収納力がない鞄です。
このダレスバッグは流石に持つ人を選ぶ気がして、一度も使ったことがありません。
美しい鞄は使いにくくても使いたくなる!
レトロな鞄の使いにくさについて書いてきましたが、実は不便と知りながらも頻繁に使用していました。
理由は、鞄が素敵すぎて持ち歩くことがうれしかったからです。
「使いやすさ」と「ひと目見て釘付けになる美しさ」はひとつの鞄で両立しなくてもよいのだなと考えています。
美しい鞄は、「モノを運ぶ道具としての存在」よりも、「使う人の気持ちを奮い立たせる何か」としての存在に重きをおいてもよいのではないかと。
ところで、これらの鞄を使いやすくする方法はいくつかあります。
例えば、
持ち手を2本にする
ショルダー紐をつける
ファスナー開きにする
外ポケットをつける
しかし、
これをしてしまうと、何か台無しになってしまう気がするのです。
特別な鞄が、どこにでもある普通の鞄になってしまうような・・・
ちなみに、私は美しい鞄も好きですが、現在作る鞄は使いやすさを重視しています。
荷物の出し入れがしやすくて、中身がごちゃごちゃしないことが必須条件です。
教室で作った鞄ほどの絶対的存在感はなくても、品があって毎日使いたくなる鞄を作っていきたいです。